方言の時代か

2018.03.06 Tuesday 13:52
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     今年の芥川賞受賞作品を読みました。2作とも日常のことと非日常のことがないまぜになった不思議な感覚の面白い小説でした。とともに2人の受賞作家のインタビュー(「文芸春秋」3月号)が、この世代の女性の仕事観などを語って興味深いものでした。 

     

     「百年泥」の石井遊佳(ゆうか)さんは54歳。大学を出るころバブルの時代で、同級生が次々と就職を決めていく中、アルバイトをしながら小説を書くことを選んだと言います。多重債務者に新たな借金をさせる「紹介屋」、洋菓子職人やスナックのホステス、温泉旅館の仲居さんなどをしながら生活をします。そこには「この経験をいつか小説に活かせるのでは」という“下心”はあったにせよ、現場ではいつも必死に働いていたそうです。

     作品の中に主人公の性格として『「愛想がない」はたいていいつでもどこでも、世間で私が獲得する定評だ』という表現があります。黙っていることを非難されるような自分、口をきくのをほとんど聞いたことがない母、クラスメートとまったく口をきかない同級生との交流などが断片的に語られていますが、これが作家の現実の姿だとすると当時は就職には苦労しただろうなぁなどと思えます。

     

     「おらおらでひとりいぐも」の若竹千佐子さんは63歳です。小さいころからお母さんに「職業婦人になれ」と言われて育ったそうです。教育学部を出たのに教員採用試験で何度も挫折。脚本家を目指してシナリオの学校に通うつもりが、生活のためにはまず仕事を見つけなければ、と学習塾を経営したといいます。

     作品の主人公の桃子さんは夫を亡くした74歳。長ったるい変化のない主婦暮らしで思考が飛ぶようになり、性別不詳、年齢不詳、おまけに使う言葉も違うばらばらな様々な声が心の声として聞こえてくる。その中で東北弁関連が喫緊の話題として考える対象になり、東北弁で考え東北弁で行動する桃子さんの生活が活写されます。

     

     実は今年は直木賞も東北弁頻出の「銀河鉄道の父」でした。宮沢賢治の父、宮沢政次郎の物語です。平昌五輪のカーリング女子で「そだねえ」が一躍有名になったのも方言にほっこりしたものを感じるこんな時代背景があったのでしょうか。しかもカーリングなど冬の“弱小”競技はなかなかスポンサーがつかず、女子選手は糊口をしのぐためにかなりの苦労をしているとも伝えられます。

     

     今時、方言が就職のデメリットになるとは思えませんが、口数が少ないことを個性ではなく欠点だと断じるような採用担当者はいないでしょうね。そんなことがあれば、ユニバーサル就労の出番ですよ。

     

     

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